CONTENTS
↓制作風景はこちらから(撮影してもらいました)
防音と換気扇
新型コロナウイルスの影響で『換気』という言葉をよく耳にする今日この頃です。今回は防音室における換気扇の取付けについてです。
防音室はその性質上、隙間がなく、非常に気密性の高い空間です。密室ですので空気の入れ替えがしにくく、必ず換気をする必要があります。
建築基準法では、1時間で部屋の中の空気を一定量以上入れ替えることのできる換気設備を設置する様に義務付けられています。
『そもそもなぜ換気が必要なのか?』
と思った方はおられないでしょうか?
換気の主な効果は以下の通りです。
・カビの原因となる湿気の除去
・二酸化炭素濃度上昇の抑制
・酸欠の防止
・シックハウス症候群の原因となる汚染物質の除去
カビやシックハウスはもちろんのこと、換気には健康面でたくさんの効果があります。
換気をしないと、二酸化炭素濃度が上昇し、
・眠気
・集中力の低下
・頭痛
など身体に影響が出ます。
いい音楽をつくる上で音楽制作において環境は大切です。まして防音室においてはたくさんの空気を吸って歌うわけですから換気設備は必ず必要です。
換気扇の選定
防音室に換気扇を取り付けるということは、防音室の内と外に空気の流れを作るということになります。
防音においては、空気の流れをできる限り遮断することが必要であり、換気においては、空気を入れ替える必要があるので相反することをしなければなりません。
また録音時にノイズが載らない様、換気扇の音に対しても配慮しなければなりません。
様々なことを検討した結果、三菱電機の『ロスナイ』という換気扇を取り付けることにしました。ヤマハの防音室『アビテックス』にも採用されています。
ロスナイについて
『ロスナイ』とは、三菱電機から発売されている熱交換式の換気扇です。
大きな特徴として以下があります。
・熱交換による換気をする
・吸排気が同時にできる
・防音効果がある
熱交換による換気
一般的な換気扇は電気でファンを回し、空気を取り込む(排出する)ことを行っています。
『ロスナイ』は、熱交換器により吸気と排気を同時に行う換気扇です。熱を回収して再利用し換気を行います。
↓詳細はこちらからご覧ください。
次はロスナイの特徴についてです。
防音効果がある(遮音性)
これが防音室に採用される最も大きな理由です。
換気扇内部の熱交換器の複雑な構造により、音が通りにくいため、防音効果があります。公式HPでも謳われています。
とは言っても、一般的な換気扇と比較して少しはマシといった程度で認識していた方がいいです。音が漏れないという訳ではありません。音は漏れます。
本格的な防音室では、フードに防音チャンバーを取り付けし対策します。防音チャンバーとは、バイクのマフラーみたいなものです。
今回私が作った防音室では、防音チャンバーの取り付けはしていません。あまりにも音漏れするようでしたら後日対策を考えることにします。
吸排気が同時にできる
『ロスナイ』は、吸排気を1台の換気扇で行うことができます。1本のパイプで吸排気ができるので壁にあける穴は1つ、防音室にとっては大きなメリットです。
吸排気を同時にするということは、室内が正圧や負圧の状態にならないため、ドアのアンダーカットやガラリも不要となり、気密性の高い空間に適しています。
正圧・負圧とは
最近の住宅は、気密性が高く作られています。そのため換気扇で室内の空気を外部に排出し続けると、外部より室内の気圧が低くなり、外部から空気が流れこもうとします。
外部より室内の空気の圧力が低くなる、これが負圧という状態です。
正圧はその逆で、外部より室内の気圧が高い状態を指します。
気密性の高い築年数の浅い住宅でキッチンの換気扇を回すと玄関ドアが重くなるといったようなことも負圧が関係しています。
取付について
取り付けは簡単にできます。
取り付けをする際は、本体のほかにフード、吸排気パイプが必要です。全て別売です。注文する際は注意しましょう。
電源をコンセントからとる予定の場合は、コンセントプラグ変換ケーブルも合わせて購入しましょう。2種類のコードの長さから選べます。
防音室内のスペース確保、ファンやモータの音の対策から室外に本体、室内にフードといった形で今回取り付けをします。
①壁に穴をあける
まずは据付位置を決め、壁に穴をあけます。補強のため余っていた板を1枚取付しました。
穴の大きさはφ120と大きいです。私はドリルとジグソーで穴あけをしました。
電源にコンセントプラグを使用しない場合は、この段階で電源線用の穴をあけ、通しておきます。
②取付プレートと吸排気パイプの接続
取付プレートと吸排気パイプがつながる部分の溝にコーキング材を充填し、吸排気パイプを取り付け、付属のアルミテープで巻き付けて固定します。
パイプの内側からも取付プレートとパイプのつなぎ目をコーキングします。乾燥を待ってから次の工程に移ります。
③吸排気パイプを切断する
壁厚+3cmでパイプを切断し、付属の断熱材を巻き付けます。フードの種類(防火ダンパーの有無)で切断長さが変わります。ノコギリ等で簡単に切断できます。
④取付プレートを取り付けする
先程あけた穴に取付プレートを固定します。水平に取付するように注意します。
⑤ロスナイ本体の取り付け
本体を取り付けします。取り付けプレートの上側に引っ掛け、下側から付属のネジで固定します。
電気配線も同時行います。オプションのコンセント変換プラグを購入していれば、端子に差すだけで配線が完了します。
カバーをつけたら室外側は完了です。
⑥室内側の隙間を埋める
室内側の壁とパイプの隙間をコーキング材で埋め、乾燥を待ちます。
⑦フードを取り付ける
フードの固定プレートを取り付けします。
上下があるので注意します。
フードを取り付けたら完成です。
費用について
自分で取り付けしたため、部材代のみとなります。
ロスナイ本体:10,406円
吸排気パイプ:623円
室外フード:1,169円
コンセントプラグ変換コード:658円
合計:12,856円
高価な換気扇の部類に入るのではないでしょうか。
実は、、、今回の防音室で最もお金かかっている部分です。当初はヤフオクで探していましたが、ちょうどいいものがなく、最終的に新品を購入しました。タイミングが合えば、もっと安く購入できたかもしれません。
動作音について
動作音は風量に対して、静かな印象を受けました。風量は弱と強の2種類があります。
強での運転では、はっきりと動作音がしますが、弱での運転あれば、特に気になりません。
取り付け位置とマイクとの関係もありますがコンデンサーマイクを使うような録音では、弱でも使用は難しいかもしれません。
⇩ダイジェスト版はこちら
はじめまして。
防音室にロスナイ取付ですね。
最近では一般住宅の各部屋にロスナイが標準で取付されていますが、今回の取付の仕方は通常とは違って敢えて内と外を逆に取付されているのですね?
面白い発想です。
通常は室内側にロスナイ本体を取付て室外側に吸排気のフードを取付ます。
ジャッカル 様
コメントありがとうございます!
そうですね。
今回、敢えて逆に取付けしました。
防音室という特性上、日常生活では特に気にならないほどの動作音でも、コンデンサーマイクを使っての録音だとやはり気になることが多いです。