DTMを初めて数ヶ月、
なんとか一曲を完成にこぎつけても、
そのたびに立ちはだかる壁がありますよね。
そう、「ミックス」と「マスタリング」です。
次の曲へ進みたいのに中々うまく出来ず、
同じ作業の繰り返し……。
「もっとクリエイティブな
作業に時間を割きたい!」
「なるべく短い時間で結果を出したい。」
そんな方々の願いを
叶えるべく登場したのがこの製品、
iZotope社のOzone9です。
最新の「AI」を利用した
マスタリングソフトですが、この製品は
「DTMを初めたばかりの初心者から、
既に技術力のついたプロ」
に至るまで、
万人におすすめできるプラグインです!
今回はそんなOzone9について説明します。
自動マスタリングソフト「Ozone9」とは?
Ozone9とは?
Ozone9はiZotope社から
発売されているマスタリングツールです。
「マスターアシスタント」と呼ばれる
AIによる自動マスタリング機能があり、
サウンドの傾向や
リファレンスを指定することで、
それに合わせて最適なマスタリングを
自動で行ってくれます。
・Elements(エントリーモデル)
・Standard(通常モデル)
・Advanced(最上位モデル)
と3つのラインナップがあり、
上位のグレードになると
操作できる機能が増えていきます。
最低グレードのElementsでも
AI機能は搭載されています。
IZotope社は大胆なセールを行うことで有名であり、
高い頻度でelementsを無料配布しています。
無料のiZotope社製品からのアップグレードバージョンが
50%OFF以上になっていたりするので、
ぜひともチェックしてみてくださいね!
“AI”であり、かつプロ向けの”コンソール”
AI機能ばかり取り沙汰されるOzoneですが、
実は非常に優秀な
「デジタル・コンソール」でもあります。
Ozone9には、マスタリングに必要な
基本的なツールが揃っており、
それをOzone9内に
モジュールとして並べることで、
2mixを加工することができます。
(※モジュールとは、
EQやコンプレッサーなどのことです。)
この各モジュールの完成度が高く、
AI機能に頼らずとも
手作業でマスタリングできる
のがOzone9の最大の長所です。
もちろんAIによる
「マスターアシスタント」機能で
自動マスタリングされたものを
微調整することも出来ます。
AIが設定した各モジュールの
パラメーターは自由に変更可能
なのでAIによって提案された
マスタリング案をベースに、
他のソフトとも組み合わせて
更に細かく作り込んでいくことも出来ます。
加えて、ほとんどのパラメーターを
小数点以下でコントロールでき、
デジタルの強みを
隅々まで活かした作りになっています。
時短と品質向上を同時に見込めるツール
というのは中々ありません。
故に、
“プロユースにも耐えうるデジタル・コンソール”
なのです。
Ozoneでマスタリングが完結!各モジュールの解説!
Ozone9 Dynamic EQ
<出典>
https://www.izotope.com/en/products/ozone/features/dynamic-eq.html
6バンドのダイナミックイコライザーです。
フィルターは
Analog(FIR)、Digital(IIR)
の2モードで動作します。
原音の質感を保つには前者を、
しっかりかつ素早く掛けたい場合には
後者を選択するといいでしょう。
ダイナミックEQとしては
基本的な機能がほぼ全て揃っており、
5種類のフィルタ形状を選んで
Thresholdを設定し、
Up/Downなどを切り替えます。
Ozone全体に言えますが、
一つ一つのモジュールの解像度が高く、
緻密にかつ大胆に掛かります。
クリアに掛かりますが
ナチュラルとは言い難いので、
人によっては
好みの分かれるところでもありますね。
Ozone9 Dynamics
<出典>
https://www.izotope.com/en/products/ozone/features/dynamics.html
4バンドのマルチバンドコンプレッサーです。
帯域別にコンプレッサー、エクスパンダー、
リミッターなどを掛けられるため、
狙った帯域をまとめて持ち上げたり、
全体のダイナミクスを
微調整することができます。
3種類の表示モードを搭載するなど、
GUIも使いやすくていいですね。
Ozone9 Equalizer
<出典>
https://www.izotope.com/en/products/ozone/features/equalizer.html
最大8バンドのイコライザーです。
「Dynamic EQ」と同様、
AnalogとDigitalの2モードで動作します。
17種類ものフィルタ形状が設定でき、
バックのスペクトラムアナライザも
シンプルかつ見やすく汎用性が高いです。
掛かり具合も自然なのでおすすめです。
Ozone9 Exciter
<出典>
https://www.izotope.com/en/products/ozone/features/exciter.html
4バンドのマルチバンドサチュレーターです。
サチュレーションは
7種類のモードを切り替え、
Amountでハーモニクス値を調節し、
mixパラメーターで原音との配分決めます。
モードは以下の7種類です。
・Analog
・Retro
・Tape
・Tube
・Warm
・Triode
・Dual Triode
個人的にはとてもおすすめなモジュールです。
4つの周波数帯域別に
サチュ量を微調整できるので、
求めている音の質感を自在に再現できます。
高域はTapeで明るくきらきらさせ、
中域にはほんの僅かにTubeをかけ濃密に、
(中域は色つけると
すぐに汚れますので本当に僅かに)
低域はTriode、Analogなどで
パンチを与える……
といったことが可能になります。
音の変化が明確でかつ、
多少掛けすぎても破綻が少ないので、
初めての方にも扱いやすいモジュールです。
ただし、掛けすぎには
くれぐれも注意しましょう。
他のOzoneのマルチバンドエフェクトにも
共通していることですが、
ソロモードで帯域別に
再生することができるので、
掛かりをきっちりモニタリングしながら
パラメーターを調節してください。
Ozone9 Imager
<出典>
https://www.izotope.com/en/products/ozone/features/imager.html
4バンドのイメージャーです。
イメージャーとは、、、
音を左右に広げ
ステレオ感を与えるプラグインのことです。
ダイナミクス同様の表示モード3種類に加え
ベクトルスコープもついているので視認性が高く、
視覚的にもどれくらい音が広がったか
確認することができます。
帯域別に掛けられるので、
低域から高域の広がりを
細かくコントロールできるのも
ポイントですね。
また広げるだけではなく、
狭めることも出来ますので、
モノ的な強さを出したい帯域に
(主に低域で)掛けることで
音を引き締めることも出来ます。
サチュレーター同様、
イメージャーも掛けすぎると
音が破綻するので、
緩やかに掛けましょう。
Ozone9 Low and focus
<出典>
https://www.izotope.com/en/products/ozone/features/low-end-focus.html
Ozone9から追加された
新しいモジュールです。
20Hz~300Hzのローエンドに対し、
PunchyとSmoothの
2種類の動作モードでアプローチします。
パラメーター数が少なく、
「ローエンドの音像を調節する」
と目的がはっきりしているので、
初めての方にも扱いやすいプラグインです。
動作モードは名前の通り、
Punchyは音を強く押し出し、
Smoothは滑らかかつ明瞭に仕上げます。
Contrastで掛かりを調節した後は、
Gainでローエンドの音量感を調整します。
ローエンドの質感は
トラック全体の完成度に影響するので、
積極的に使っていきたいですね。
Ozone9 Master Rebalance
<出典>
https://www.izotope.com/en/products/ozone/features/master-rebalance.html
こちらもOzone9から
搭載されたモジュールです。
2mix音源を帯域別ではなく、
Vocal,Bass,Drumsの
楽器別で音量をコントロールする
というプラグインです。
当然ミックスに段階まで戻れるのであれば
リミックスするのが好ましいですが、
音源がマスタリング済みで
どうしようもない時や
手軽に処理をしたい際に重宝します。
Ozone9 Match EQ
<出典>
https://www.izotope.com/en/products/ozone/features/match-eq.html
Ozone8のEQにあった機能が
独立してモジュールとなったものです。
取り込んだリファレンス波形(CDなど)
の周波数特性を分析し、
なんと8000バンドものEQによって
その周波数特性を楽曲に反映させ、
再現するという恐るべきプラグインです。
市販のCDや参考にしたい音源の
周波数特性を分析し
自作の音源に再現するというものです。
EQが設定された後は2つのパラメーターで
どれくらい近づけるか調節します。
AI機能を積極的に使用した
現代的プラグインですが、
ざっくり掛けてしまうと
意外と音が破綻しやすいので、
2つのパラメーターを使って
うまく設定する必要があります。
Ozone9 maximizer
<出典>
https://www.izotope.com/en/products/ozone/features/maximizer.htmll
5つのIRCを切り替えて
コントロールできるマキシマイザーです。
5つとは言いますが、
実際には各IRCで
更にモードが分かれていたりするので、
かなり積極的に音を変えつつ、
ダイナミックレンジを維持したまま
ラウドネスをあげることができます。
うまく使えば非常に有用ですし
音の変化が明瞭なので、
意外とざっくりしたセッティングでも
有効だったりします。
Ozone9 Spectral shaper
<出典>
https://www.izotope.com/en/products/ozone/features/spectral-shaper.html
ディエッサー的動作によって
2mix内で問題が発生している帯域に
リダクションを掛けるプラグインです。
動作原理こそ違いますが、
Soothe2とかGullfossのように、
手軽にぼやけている帯域を
処理することができます。
ある程度2mixの音を耳で分析し、
周波数帯域を選択して
アプローチを掛ける必要があるため
扱いはやや難しいですが、
うまくセッティングできれば
非常に効果的ですね。
Ozone9 Vintage comp
<出典>
https://www.izotope.com/en/products/ozone/features/vintage-compressor.html
SSLのバスコンなどが有名な
フィードバックコンプレッションを
忠実にモデリングしたコンプレッサーです。
コンプされた出力値で
レベルを検知する方式のコンプレッサーで
2mixなどに適しています。
GUIが統一化されているため
分かりやすいOzoneですが、
VintageシリーズはOzone色をそのままに、
ツマミをいじって音が良くなるという
アナログ的な発想もしっかり取り入れており、
かなり優秀なモジュール群となっています。
Ozone9 Vintage EQ
<出典>
https://www.izotope.com/en/products/ozone/features/vintage-eq.html
Pultec EQP-1AとPultec MEQ-5を
モデリングしたイコライザーです。
ハイとローをEQP-1A、
ミッドレンジをMEQ-5によって処理し、
アナログモデリングでありながら
実機にはない音を作り込めます。
デジタルのように周波数を
細かく指定することはできませんが、
ロー、ローミッド、ミドル、ハイミッド、ハイ
の5つの帯域ごとにアプローチできるので、
ざっくりかけているのに
緻密かつ音楽的に仕上がるという
摩訶不思議なプラグインです。
味付けをしつつ全体を整形できるので、
個人的にはOzoneを使った
手動マスタリングの要となっています。
Ozone9 Vintage Limiter
<出典>
https://www.izotope.com/en/products/ozone/features/vintage-limiter.html
伝説的なコンプレッサー/リミッター
「Fairchild 670」のモデリングです。
GUIやパラメーターが
実機とあまりにも違うので
分かりづらいのですが、
実機とは違い、Inputで突っ込んで
サチュレートするといった方式ではなく、
3種類の動作モードを使い分けつつ、
標準的なLimitingのパラメーターのみで
しっかり色が付きます。
単なるモデリングにはとどまらず、
EQ同様大胆で繊細な音作りができ、
アナログとデジタルの両方の長所を
取り入れたモジュールとなっています。
Ozone9 Vintage Tape
<出典>
https://www.izotope.com/en/products/ozone/features/vintage-tape.html
最後のモジュールは、
テープシミュレーターです。
テープシミュレーターというと
ヒスノイズやワウフラッターなどの
テープ効果を加えていくような
音づくりが想像されますが、実際には
周波数特性とディストーションを組み合わせた
マスタリング向けの
テープシミュレーターとなっています。
インプットでサチュレーターへの掛かり具合を
BIASでサチュレーションそのものを
コントロールしますが、
このBIASは単に色を付けるだけでなく、
周波数特性にも影響を与えます。
また狙った音に併せて
ハーモニクスを加えて色合いを微調整したり、
ローないしハイをEmphasis(強調)して
比重や特性を変えるなど、
繊細な作り込みが出来ます。
扱いは難しいですが、使いこなせれば
かなり強力なツールとなるでしょう。
他のマスタリングツールとの比較
Ozone9の他にもAIを利用した
いわゆるチート系プラグインは
数多く存在します。
当然ですが、それぞれ別々のアルゴリズムで
動作しているため
完成形の音も変わってきます。
この項目ではAI機能という部分に着目して
他のプラグインとOzoneを比較していきます。
iZotope Ozone 9
特徴
・しゃっきり
・がっつり
・くっきり
まさに現代の音そのものです。
もちろん素材次第ではありますが、
ローミドルとハイミドルを強調した
ドンシャリ気味なサウンドに、
マキシマイザーを突っ込んで
ラウドに仕上げます。
AIのセッティングも
複数あるので一概には言えませんが、
基本的には
EQ→マルチバンドコンプ
→Dyn EQ/EQ→マキシマイザー
と言った順序で処理するようになっています。
仕方ないと言えば仕方ないのですが
パターン化されているので、
結構似たりよったりな音になりがちです。
もちろん初めのうちは、
実際に設定すべきパラメーターを
示したリファレンスとして
非常に参考にはなりますが、
最終的にはあまり使わなくなると思います。
Eventide Elevate
・ナチュラル
・デリケート
・クリエイティブ
つい最近とても良いコーラス音源を
販売したEventideによる
Ozoneと同様、
AIによるマスタリングが
可能なプラグインです。
最大の特徴は
Harvey Fletcherによって発表された
『人間の聴覚特性は26バンドに別けられ、
各バンドに付き1つの音の認知できる』
と言う理論に基づいて、
周波数帯域を26に分割する
FILTER BANKです。
「AI機能か手動か」というOzoneと比べると、
AIのサポートを受けながら
繊細なセッティングを行うプラグインです。
この26バンド調節、
びっくりするほどナチュラルに音が作れます。
各トランジェント
(音の輪郭であるアタック時のノイズ)も
作り込んでいけるので、
Ozoneとは棲み分けが可能です。
一方でOzoneと違って
色付けまでオールインワンで出来る
というものではなく、
あくまでリミッターとトランジェントを
26帯域で調節するものです。
棲み分けも可能なので
ぜひともチェックしてみてください。
LANDR
・派手
・にぎやか
・きらきら
プラグインではないですが
同じく自動マスタリングなので
比較しようと思います。
Ozoneよりも派手に
現代的な音にしてくれる
オンラインサービスです。
かなり音が派手になりますので、
バンドサウンドの編成によっては
ギターやシンセあたりが
痛く感じることもあります。
プラグインではないので
微妙な調節は無理ですが、
手軽さではナンバーワンですね。
TC electronic Finalizer
<出典>
https://www.gearnews.com/tc-electronic-releases-finalizer-app-for-software-based-mastering/
・高速
・明瞭
・綿密
こちらは逆にAI機能ではないですが、
プラグイン内のモジュールをチェーンして
音作り出来るという部分で
Ozoneに似ているので紹介いたしますね。
TC Electronicの
プラグイン全般に言えることですが、
作り込みが凄まじく、
かつ現代的なスピード感のある音がします。
それでいてカラーがしっかりついていて、
どこまでも音楽的に
追い込めるのが素晴らしいですね。
結構強めに掛けても破綻せず、
各モジュールとチェーン、
そして明晰なアナライザによる変化を
細かくモニタリングできるので、
Ozone並に作り込みが出来ます。
Ozoneとは音や操作感の好み次第ですね。
ただしOzoneの方が
単品でモジュールを扱えるので、
両方持っていても
損をするということはないです。
Soundtheory Gullfoss
・透明
・自然
・万能
マスタリング用途とは銘打たれていませんが、
バスやマスターなどに使えるEQですので
紹介いたします。
イコライザーとはありますが、
実際はマスキング部分を整理する
ダイナミックEQです。
とにかく透明です。
音に癖がなく、それでいて、
マスキングした部分を綺麗に処理します。
Ozoneのようにオールインワンではないので
あくまでもマスキングを処理しつつ
出音を微調整するものですが、
このマスキングというのは非常に厄介なので、
それをこんなにも自然に整える
Gullfossは本当に素晴らしいです。
Ozoneとは当然棲み分け可能なので、
両方持つといいです。
Zynaptiq Intensity
・明晰
・溌剌
・魔法的
最後に紹介するのはこちらです。
AIでもなく
オールインワンマスタリングでもないですが、
いわゆるチート系ツールなので
紹介させていただきます。
まず、扱いがとても難しいです。
どでかいパラメーター二つなので
手軽そうに見えますが、
実際は真ん中のBIASやDRY-WETなど、
各パラメータを限りなく
微妙に調節する必要があります。
そうして出される音は、ものすごく明瞭です。
各楽器の輪郭が立ち音像がくっきりするので、
これ一つでどこまでも音を詰めていけます。
顔認証アルゴリズムを
応用しているらしいです。
エンハンサーともサチュレーターとも
コンプともリミッターとも
マキシマイザーとも言えない
不思議なプラグイン……。
デジタルの進化に驚かさせられます。
最後に
iZtope社のOzoneの説明は以上となります。
Ozone9はAIによるマスタリングの手軽さと、
各モジュールの調節による繊細さを両立した
非常に優秀なプラグインです。
音源はもうあらかた持っていて、
「ミックスやマスタリング用の
ソフトを揃えたい!」
という方にぜひとも
オススメさせて頂きたいソフトです。
モジュール以外の機能群も
非常に便利で使いやすく仕上がっています。
ぜひとも研究してみてください!