音楽制作において
コンプレッサーは
非常に重要なエフェクトです。
音楽に携わっている方なら
実際に扱っている方も多いでしょう。
ギターでもベースでも
ドラムでもキーボードでも
大抵の楽器はコンプを使用しますよね。
DTMをするなら、
なおのこと理解が必要です。
コンプについての知識は
深く知っておくべきですし、
基礎知識があれば、
その楽器の特性を見極めて、
応用することも可能になります。
まず初めに、、、
コンプは音量を均一化するだけの
エフェクトではありません。
コンプは音を圧縮することによって
様々な音色、音質を作り出すことのできる
かなり万能なエフェクトです。
今回はコンプレッサーの
基礎知識について説明します。
CONTENTS
コンプレッサーについて
コンプレッサーは、
単に音を圧縮するだけの
エフェクターではありません。
音質、音の距離感や広がりのほか、
リズムの躍動感なんかもコントロールできる
非常に奥の深いエフェクターです。
非常に便利なコンプレッサーですが
使いこなすのは、かなり難しいです。
そもそも完成の音や
時間経過による音の変化を
イメージすることが難しい。
しかし数あるエフェクトの中で、
これほど重要なエフェクトはありません。
まずは最低限、
基礎知識を身につけましょう。
コンプレッサーとは
コンプレッサーはその名の通り、
「音を圧縮するエフェクト」です。
音を圧縮して、全体の音量を均一化します。
役割として、たったそれだけです。
しかし、先ほども申し上げましたが、
実はもっと多くのことが
できるエフェクトでもあります。
プロのエンジニアは、
コンプのことを熟知しており、
コンプレッションによる音色変化を
非常に上手に使いこなしています。
コンプだけでミックスを行っても
「こんなに音が変わるのか!」
と衝撃を受けるほどです。
以下の記事で、
コンプの効果をお聴き頂けます。
ちなみにエフェクターの分類では
”ダイナミクス系”に分類されます。
ダイナミクス系のエフェクターというのは、
音量をコントロールするエフェクトです。
コンプレッサーの仕組み
コンプレッサーは、
ある基準以上の音量にのみ動作し、
基準を超えた音だけを圧縮します。
基準以下の音量であれば、
コンプは働きません。
(電源のお話ではなく、
動作のON/OFFのお話です。)
ずっと動いているわけじゃないんですね。
大きい音を圧縮することにより、
小さい音と大きい音の差が小さくなり、
音量が均一化されます。
パラメーター
コンプレッサーを使おうとすると
たくさんのパラメーターがあり、
初めてなら混乱するでしょう。
『感覚で調整する。』
といった方も知っていますが、
知識なく使いこなすことは
やはり難しいです。
最終的には出音を
耳で判断することになりますが、
本気でミックスをするなら
最低限の知識は必ず必要です。
それでは、
コンプレッサーによく登場する
パラメーターを一通り紹介します。
どれも重要なパラメーターなので
しっかり覚えておきましょう。
スレッショルド(Threshold)
コンプレッサーは、
音量の大小に反応して動作します。
音量がある一定のレベルに達すると
動作し、音を圧縮します。
このコンプレッサーが動作する音量を
スレッショルド(Threshold)といいます。
簡単に言えば、
コンプレッサーの動作の
開始地点を決めるものです。
コンプレッサーは
ずっと動作しているわけではなく、
スレッショルドの値を
超えた時にのみ動作しています。
つまり時間経過の中で
基準を超えた大きな音だけを圧縮して
結果的に全体の音量差が
小さくなっているというわけです。
上の図は、
スレッショルドを-10dB
に設定した場合です。
レベルが-10dBを超えると、
コンプが動作します。
このスレッショルドの設定によって
コンプの掛かり具合を調整できます。
ゲインリダクション(Gain Reduction)
コンプレッサーは、
スレッショルドで決められた
レベルを超えると動作し、音を圧縮します。
どのくらいの音量が圧縮されているかは
大抵は視覚的にも確認することができます。
多くのコンプレッサーには、
どのくらいの音量が圧縮されているかを
視覚的に表示するメーターが
取り付けられています。
(ついていないものもあります。)
大抵のメータは、
0dBが基準になっていて、
コンプが働くとマイナス方向に針、
またはメーターが振れます。
振れた針が-5dBを指しているなら
元の音量より5dB
小さくなっていることを示します。
この圧縮されている音量を
ゲインリダクションといいます。
メイクアップゲイン(Gain)
コンプレッサーは音を圧縮します。
圧縮するということは、
全体の音量はもとの音量より
小さくなりますよね。
コンプによって音質は変化したけれど、
音量が小さいといった問題が生じます。
それを解決するのが、
メイクアップゲインです。
圧縮された音質をそのままに、
音量だけを上げます。
レシオ(Ratio)
レシオとは、
スレッショルドを超えた原音を
どれぐらい圧縮するか
を決めるパラメーターです。
圧縮比の設定ですね。
スレッショルドを超えた分の音量が
圧縮されます。
上の図は、
レシオが2:1、スレッショルドが-6dB
に設定されている場合です。
原音のピークが-2dBだった時は、
-6dB(スレッショルド値)を超えた
4dB分に対して2分の1の圧縮をします。
ピークが-4dBだった時は、
-6dB(スレッショルド値)を超えた
2dB分に対しての2分の1の圧縮します。
ちなみに、
ピークとは最大音量のことです。
ここで1つ重要なことがあります。
レシオは音の圧縮比を指定するものですが、
圧縮比によって、
音色の変化に大きく影響します。
少し難しくなりますが、
音を圧縮すると、周波数構成が変化します。
周波数構成が変化すると、
聴こえ方にも変化が生じるというわけです。
一概には言えませんが、
レシオの値が低いほど、
音の抜けがよくなり、
高くなるとその逆になります。
レシオの設定によって
音色に変化が出ることは
覚えておきましょう。
ニー(Knee)
スレッショルド付近では、
入力レベルによって、
コンプが動作したり、しなかったりします。
そうすると、
コンプがかかった音とかかっていない音で、
違和感を感じることがあります。
それを解消するのがニーです。
コンプのかかった時、
その始まり方が
緩やかになるように動作します。
設定には、
ハードニーとソフトニーの2種類があります。
基本的には、
つまみを左に回し切った時がハードニー、
右に回し切った時がソフトニーとなります。
ハードニーでは、
設定したスレッショルドを超えると
いきなりコンプがかかるため、
急激な音量差が出ます。
波形の編集でもそうですが、
音量差のある波形同士を
クロスフェードなしに繋ぐと、
ノイズが生じます。
それと同じようなことですね。
逆にソフトニーは、
波形同士をクロスフェードでつなぐ
イメージを持ってもらえればいいです。
コンプによって音量は抑えられているが、
コンプ感のない、自然な音になります。
上記の理由からニーは、
レシオとともに、
音色に大きく影響するパラメーター
であることがわかります。
ハードニーに寄せると、
パーカッシブな音色に、
ソフトニーでは、
自然な音色が欲しいときに
と使い分けることが大切です。
またレシオとの組み合わせにより、
音の選択肢も広がります。
レシオの値が高いと、
音の抜けが悪くなりがちですが、
ハードニーに設定すれば、
音にパーカッシブな印象がつき、
抜けの悪さをカバーすることができます。
アタックタイム(Attack Time)
アタックタイム(Attack Time)とは
入力音がスレッショルドを超えてから、
レシオで指定した圧縮比に
到達するまでの時間を設定します。
このアタックタイムの設定により、
入力音のアタックの音(音質、音量)を
コントロールすることができます。
アタックの音が耳につく時は、
アタックタイムを短く設定すれば、
入力音がスレッショルドを超えると
すぐに圧縮が始まるので、
アタックの音が潰れ、聴きやすくなります。
アタックを長く設定すると、
入力音がスレッショルドを超えても、
すぐに圧縮が始まらないため、
アタックの音は圧縮せず、
アタックよりも後ろの音を圧縮します。
そのため相対的に
アタックの音が大きくなります。
このアタックタイムは、
特にリズム楽器のコンプ処理で
重要となります。
アタックタイムとニーの調整により、
ノリを変化させることできるからです。
リズムの頭が聞こえるように
調整すれば前ノリに、
逆にリズムの頭を
ぼやけさせるような設定をすると
後ノリになります。
リリースタイム(Release Time)
アタックタイムに対して、
リリースタイム(Release Time)
というものがあります。
リリースタイムは、アタックタイムと逆で、
入力音がスレッショルドを下回ってから
圧縮をオフにするまでの時間を設定します。
アタックタイムは
コンプを引っ掛けるタイミング、
リリースタイムは、
コンプを離すタイミング
だと考えて頂ければいいです。
リリースタイムも
アタックタイムと同じように
リズム感に変化をつけることができますが
リリースタイムは適切に
処理、設定する必要があります。
なぜならリリースタイムが短すぎると、
入力音がスレッショルドを下回ったときに、
急激に入力音のレベルにまで
音量が戻ることになるため、
コンプが切れると同時に
急に音が大きくなる、
といったことが起こります。
逆にリリースタイムが長すぎると
次のアタックに被りが生じて、
圧縮したくない音にまで、
圧縮をかけることになります。
コンプレッサーとその仲間
コンプレッサーと一口にいっても
同じような原理で動作している
コンプレッサーの仲間は多く存在します。
今回は3つほど紹介します。
リミッター(Limiter)
リミッター(Limiter)
というものを聞いたことがありますか。
コンプレッサーとセットになっている
エフェクターも多いです。
リミッターは、
最大音量を一定化するエフェクトです。
設定したスレッショルド以上に
音量が上回らないようにしているんですね。
原理はコンプレッサーと同じです。
レシオを高く設定し、
(20:1以上、もしくは∞:1)
アタックを最小に、
リリースも短めに設定します。
レベルオーバーによるノイズなんかも
比較的簡単に抑えることができ、
何かと使いやすいリミッターですが、
あまり強くリミッターをかけ過ぎると、
抑揚や音楽的なニュアンスが失われます。
マキシマイザー(Maximizer)
マキシマイザー(Maximizer)は、
リミッターの仲間ではあるものの、
基本的にその使用する場面は限定的です。
音質や音色の追求には使いません。
マキシマイザーは、
最大音量をスレッショルドで
指定した値に抑えつつ、
聴覚上のの音量を上げたい時に使います。
一口に言えば、
音を大きくするエフェクターです。
音を圧縮することで
小さい音を持ち上げ、
密度を濃くします。
簡単に音圧を上げることができ、
インパクトのある音が作れる
マキシマイザーですが、
もちろんデメリットも存在します。
音圧のアップには限界があり、
限界点を超えると、音に歪みが生じます。
過度の使用は、
細かいディテールなどの表現を崩壊させ、
音楽的な部分で、いいものでなくなります。
使用する際は、注意が必要です。
ディエッサー(Deesser)
最後にもう一つ、
ディエッサー(Deesser)
というエフェクトについて紹介します。
ディエッサーは、
特定の周波数の音量を
抑えることに使われます。
主にボーカル用のエフェクトです。
録音した曲を聴いていて、
「さしすせそ」の発音が耳に付いたり、
英語でしたら、「SやZ」などの発音が
不快に感じることはありませんか。
これらの音は歯擦音と呼ばれます。
日常生活においては、
あまり気にならない歯擦音ですが、
いいコンデンサーマイクを使って録音すると
気になることが多々あります。
これらの歯擦音は、
主に7kHz辺りの高音部分に分布しますが、
ディエッサーを使えば、
その周波数帯域の
音量のみを抑えることができます。
主にボーカルに使用しますが、
ボーカル以外への使用も、
もちろんできます。
弦楽器特有の弦と指が擦れる音や
ギターのピッキングノイズが気になる時は、
ディエッサーを使用することにより、
それらを抑えることができ、
音色にも変化が生じます。
さいごに
覚えることが多くて
「コンプレッサーは難しい。」
と感じた方も多いのではないでしょうか。
コンプレッサーは
奥が深く、使いこなすことも
非常に難しいエフェクトです。
たくさん使ってみて、
徐々に理解を深めましょう。
私はミックスやマスタリングの
作業の面において、
コンプを使いこなせることが
最も重要だと考えています。
場合によってはEQを使うことも必要ですが、
基本的に可能な限りは、
コンプで調整してみましょう。
使いこなせれば、曲のクオリティが
1ランク、2ランクアップしますよ。